テスラ社といえば電気自動車メーカー。イーロン・マスクCEOといえば、良くも悪くも話題になる名物社長。ツイッタ―のフォロワーは2200万人に及ぶ。本業のみならず、人類火星移住計画や宇宙ロケット再利用計画などをぶち上げる。

電気自動車開発など次世代産業開発には、長期的視点・戦略が必要。四半期ごとの決算発表、そのたびにアナリスト・ミーティングで重箱の隅を突っつくような質問を受けることに我慢ならない、という自説。この際、株式上場・公開を止めて、非上場企業になれば、本業に専心できる、と考えた。そして、いきなりツイッタ―で株式非公開計画を明らかにしたのだ。

素通りされたメディアや虚を突かれたアナリストたちは一斉に反発。そのような大事なことを、ツイッタ―で呟くとはけしからん、というわけ。

そもそも財務データを公開して、市場に信頼されなければ、今後の資金調達にも支障をきたす。電気自動車本格開発には膨大な資金が必要だ。

更に、株式を非公開にするためには、大量の流通株を買い取らねばならない。その資金の出し手としてマスク氏が狙うのは巨大政府系ファンド。ノルウエ―、中国、アブダビ、クエート、サウジアラビアなどの国家ファンドの名前が候補として挙がっている。

この非公開計画に、米国市場参加者の間でも、賛否両論渦巻く。

同族企業のごとき形態になると、社長の独断が幅を利かす。内部のチェック体制も甘くなる。

果たして、テスラ社は、マスク氏のものか、株主のものか。

筆者は、かねてから、四半期決算にこだわりすぎの弊害を感じているほうなので、マスク氏のやりたいように、やらせてやれ、と思う派。人類の夢の計画など、そもそも3か月ごとに結果が出るはずもない。

でも、メディアにしてみれば、名物社長が、3か月に一度、アナリストとやりあうのは恰好のネタになる。

実は、金鉱山会社も、短期に結果が出る企業ではない。ヤマを掘って、金が出るか出ないか、まさに「山師」の世界だ。うまく掘り当ててれば、その鉱脈で社員たちが数十年食ってゆけるような「鉱山寿命」戦略を練らなければならない。夢もあればリスクもある。

この問題、俄かに解決策が見つかるとは思わない。結局、どちらかに賭けることになろう。