ドル金利下落に歯止めがかからない。市場の関心は、長短どちらの金利の下げペースが速いか、という点だ。

FRBの利下げ観測が強まれば、相関の高い短期債の利回りが低下する。

中国・欧州経済指標が悪化すれば、安全性を求めるマネーが米長期債に流入して、ドル長期金利を押し下げる。

25日のNY市場では、一時10年債利回りが2.4%の大台を割り込む局面もあった。株価も敏感に反応して、ダウ平均も100ドルを超す下げとなった。

通常、金利が下がれば株価は上がるはず。しかし、逆イールドの呪縛に取りつかれた市場は、長期金利が急落すると、長短金利逆転更に深化が懸念され、株価が下がる。

いっぽう、短期債利回りが下落する局面もあった。シカゴ連銀エバンス総裁が、1998年アジア経済危機時のFRB利下げを引き合いに出し、当時のグリーンスパンFRB議長の迅速な決断を評価する発言が伝わったときだ。引き締めから緩和への転換、という意味で、今回と状況が似ているとしている。短期金利が下がれば、順イールドへの回帰が連想され、株式市場は安堵する。

かくして、市場の一喜一憂が繰り返されそうだ。

NY金も、1320ドル台まで上昇したが、跳ね返されている。

逆イールドの長期化は必至だ。

FRBへの介入姿勢を露骨に強めるトランプ大統領にとっても悩ましい展開だ。

過去の事例を見ても、タイムラグを置いて景気後退に突入しているので、大統領選年2020年の米国経済が危うい。

そこで、トランプ氏はFRBに「利下げ」圧力をかけることが予想される。

しかし、現在の政策金利水準は2.25%-2.5%。利下げの余地は2.5%しかない。過去の景気後退期に実施された利下げは5%程度が必要だった。

FRB保有資産圧縮プログラム停止という緩和措置も9月には、そのカードを切ってしまう。

そこで、FRBもマイナス金利導入の可能性もウオール街では議論される。

今や、世界のマイナス金利国債総額が10兆ドルに達するとの報道もあるが、FRBは伝統的に拒否反応が強かった。銀行業への副作用が強すぎるとの配慮であろう。

しかし、トランプ大統領の発想は、金融市場の常識を超える異次元にある。欧州中央銀行(ECB)と日銀がマイナス金利政策を維持しているのに、なぜFRBはこだわるのか、との疑問が発せられるかもしれない。

中央銀行の緩和比べが進行する中で、日銀の追加緩和も、欧米市場の注目点となってきた。

なお、これまで中国の米国債売却傾向が市場では意識されてきたが、今後は、中国が米国債購入を増やし、ドル長期金利を押し下げ、逆イールド現象を助長するシナリオも考えられよう。中国にとって米国債は米中貿易戦争の「武器」となる。