日本の連休中に生じたNY発株安、円高。

一言で言って筋が悪い相場だ。

キッカケとなったトランプ大統領のパウエルFRB議長解任説。ウオール街では、トランプ氏の度重なるFRB口撃に、いずれ、「パウエル議長はクビだ」と言い出すのではないか、との噂は流れていた。そこに外電が観測記事を流した。ムニューシン財務長官が、否定ツイートしても、一連のホワイトハウス幹部解任劇を見せつけられている市場は疑心暗鬼だ。その後、トランプ氏が「お粗末なゴルファーのごときFRBが問題の全て」と毒づいたが、さすがに「議長解任」の言葉はなかった。結局、噂の域を出ていない。それでも市場心理悪化を映す騒動ゆえ筋が悪い。

次に、ムニューシン財務長官が、滞在中のニューメキシコ州から大手銀行6行トップに異例の個別電話で流動性には問題ないことを確認した。更に、金融監督関連当局とリーマンショック時を連想させるような、流動性・健全性・清算機構の機能性を確認する「会議」を開催した。政府機関一部閉鎖中だが金融当局は経済危機に対応できることを示し、市場の懸念を払しょくするための「透明性」を強調するための動きだろうが、あまりに唐突だった。ハイイールド債市場に信用不安などは懸念されていたが、市場危機水準の経済危機に関して切迫感は薄かった。それゆえ、市場はムニューシン財務長官は自分たちが知らない何かを握っているのでは、と勘繰る。しかし、米国銀行はストレステストの洗礼を受けている。金融危機防衛緊急会議招集ほどの流動性不安懸念が生じるほどの財務体質悪化とは考えにくい。とはいえ、パウエル議長が利上げに関して市場との対話を誤り混乱を招いた直後に、財務長官が同じ過ちを侵した感がある。ムニューシン財務長官にも株価急落を招いた責任者の一人として解任の噂が絶えない。それゆえの焦りであろうか。やはり筋が悪い。

政府機関一部閉鎖にしても、市場は慣れているので、「閉鎖」という言葉ほどの緊張感は薄い。むしろ「またか」と冷ややかに見ている。投機筋の売りの口実に使われている印象が強い。

原油価格が42ドルまで続落したことも、VIXが警戒水域内の36台にまで急騰したことも、市場心理を悪化させている。

 

重要なことは、これほどの資産価格変動を誘発している市場環境だ。

世界的経済減速の悪影響が独り勝ちと言われた米国にも跳ね返ってくることが懸念される。

量的緩和という非伝統的政策が日銀を除き終焉に向かい、過剰流動性が回収の段階に入った。もはや、潤沢なマネーの時代は終わりつつある。

トランプ政権内で、国務長官、国防長官、司法長官、主席大統領補佐官と相次ぐ解任は異常というほかない。ロシアゲート捜査進展とともに政治リスクが顕在化している。

 

そして、日本も当然、巻き添えを食らう。

日経平均は大台割れで、下値模索の段階に突入した。震源地が米国市場ゆえ、日経平均が日本時間深夜に大きく変動してしまう。外人投資家依存体質が下値目途の予測を難しくしている。

円高要因も根が深い。今回は株安だが、日米通商交渉の議題に為替も含まれることは円高材料だ。FRB,ECBが量的緩和終了となり、次は日銀との観測が特に欧米市場では強気意識され、これまで関心が薄かった日銀政策決定会合への注目度が飛躍的に高まっている。外電の「出口」観測記事により夜間に円高が進行してしまうリスクが19年は増えそうだ。

 

今回のクリスマス・ショックは、2019年相場の予告編に見える。

 

こういう状況だから、安全資産としての金市場のマネー急流入中。

上がっているのは金くらいのもの。

やっぱり来年は金の年だよ。

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なお、明日朝8時からテレ朝系の羽鳥モーニングショーに生出演で経済解説の予定です。なにか大きなニュースあれば飛びますが()