「当面今年利上げ回数は3回に留めるが今後4回に増える可能性もあり。来年は2回程度との予測を3回に増やす。更に2020年の予想FF金利は3.1%から3.4%に引き上げ」
これが、パウエル新FRB議長初のFOMCとFRB最新経済見通しから市場が受け取ったメッセージである。
詳細に前回(2017年12月)と今回を比較してみよう。
FOMC参加者の2018年末金利予測分布は、前回、1.125%1名、1.375%1名、1.625%1名。1.875%3名、2.125%6名。2.375%3名、2.625%1名とかなり広範に割れていた。
それが、今回は、1.625%が2名、2.125%が6名、2.375%が6名、2.625%が1名と予測金利水準が収斂傾向で上がっている。
明らかに、前回より予測を引き上げた参加者が増えている。
例えば、前回6名いた1%台予測者の数は今回2名に減り2.375%予測者は3名から6名に増えている。
この分布の平均値をとると、0.25%刻みの利上げ回数が前回の3回から、今回は限りなく4回に近い3回ということになる。
2019年に関しては、金利予測が割れているのだが、前回のレンジが1.125%―2.625%に対し、今回は1.625%-3.875%と明らかに上昇している。
分布の平均値をとると、0.25%刻みの利上げ回数が前回は2-3回だったが、今回は3回と増えた結果となっている。
総じて、タカ派の参加者数が増えたといえよう。
市場の反応は、「今年の利上げ回数3回から4回に増加」との事前予測に身構えていたので、事前予測を下回ったことで、外為市場ではドル安・円高に振れた。
株式市場では、タカ派増加に警戒しつつも、利上げ加速に切迫感がやや薄れたことで安堵も感じられる。
そして、金価格は1,310ドル台から1,330ドル台に急騰。
金利を生まない金にとって利上げは天敵。
年3回なら許容範囲。
4回は執行猶予の判決で、4回利上げを見込んだ投機筋の空売りが一斉に買い戻された。
とはいえ、依然レンジ内に留まる。
総じて、今後の金利動向の不透明感は依然残る。
特に、パウエル議長記者会見では、トランプ財政政策と保護主義政策の影響について繰り返し質問が出たが、明確な議長答弁は聞かれなかった。
更に、FRB経済見通しでは、経済成長見通しを引き上げても、インフレ率は伸び悩み傾向とされた。
その説明も充分ではなかった。
口調も、パウエル氏の喋りはイエレン氏より速い。
噛んで含めるように語るイエレン氏に比し、短いセンテンスで答えを切り上げる傾向が顕著だ。
この点で、マーケットとのコミュニケーションに、やや懸念を残したともいえよう。
とはいえ、今回はパウエル新議長のデビュー戦。
思い起こせば、イエレン氏も就任当初は、記者会見での発言が思わぬ市場の反応を誘発した事例もあった。
未だ未知数も多いパウエル新FRB体制ゆえ、市場も、今後のお手並み拝見とばかりに、とりあえずは激しい乱高下を回避した感がある。
なお、FB(フェイスブック)問題が政治スキャンダルの様相。
これについては、今日は多忙ゆえ、詳しく書く余裕がないが、ツイッタ―@jefftoshimaで、随時展開を流している。
それから、今後のマーケット動向について、既にお知らせしたとおり、今日午後1時25分から日経CNBC昼エクスプレスに生出演して語るよ。
日経チャンネルのVODで再生可能。