トランプ大統領は、米中貿易戦争の「武器」である「関税」引き上げを延期した。3月5日に全人代を控え、関税引き上げは回避したい習近平氏に恩を売るというトランプ流取引であろう。最重要項目のハイテク覇権争い、国営企業への国家助成に関しては棚上げされた。次は3月下旬、フロリダでの米中トップ会談で、玉虫色の決着に持ち込む構えだ。それまでに、閣僚レベルで、焦点の構造問題を含む一見多項目に亘る合意リストの体裁だけは整える手はずと見える。しかし、その中身は極めて希薄となろう。

2020年の大統領選挙を睨むトランプ大統領は、当面、米中共倒れは回避して、年後半に、選挙を意識した中国叩きを再開するとの本音も透ける。

NY市場でも、今回の米中通商協議を本気で進展したと評価している参加者は少ない。「(交渉進展の)噂で買ってニュースで売る」動きが顕著だ。たまたま大型M&Aが重なり株価は上昇した。

日本市場では、「次の通商標的は日本か」との懸念が浮上している。

しかし、NY市場では「次は欧州」の声が圧倒的だ。

先頃ミュンヘンで開催された国際安全保障会議で、ペンス副大統領が、厳しい口調で欧米同盟関係に警鐘を発した記憶が鮮明に残る。トランプ政権は、EU側にはGDP比2%の軍事費負担を強く求めるが、ロシア南下政策をにらみ、欧州の弱体化も避けたい。既にドイツは求心力を失いつつあり、やむなくポーランドには最大級の米軍を派遣している。既に米中貿易戦争のあおりで経済減速が顕在化しているEUゆえ、通商協議では厳しい条件をつきつけ、交渉を有利に運ぶ意図も市場では意識される。「中国の次は欧州」との警戒感が強まる。「日本が標的」との認識は極めて薄い。米朝会談が注目されるなかで「日本の首相がトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦した効果」と皮肉る声も聞こえてくる。

とはいえ、ライトハイザー通商代表は日本にとって手ごわい存在だが、最近はトランプ大統領との軋轢も見え隠れする。米中通商協議の結果を「覚書」のかたちでまとめていたライトハイザー氏に、トランプ大統領は「覚書ではなく契約だ」と公然と異義を呈した。顔が真っ赤になったライトハイザー氏に関しては、かねてから、通商代表以外の公職を模索中との噂が市場では絶えなかった。

もう一人の交渉担当者であるムニューシン財務長官は、為替条項にこだわるが、その実効性は曖昧である。

総じて、「中国の次は日本か」と問うと、「いわれてみれば、無いともいえない」程度の答えが跳ね返ってくる程度だ。

 

なお、明日、読売新聞朝刊に金関連記事を寄稿します。

 

今日の写真は、大好物、さくら餅!京都や大阪は道明寺だね~

 

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