昨日書いたイタリア政治リスクが次々と世界の市場を直撃している。
市場がイタリア危機に揺れる最中、ソロス氏が「再び大きな金融危機に向かっている」「EUは存続の危機にある」と発言した。
ウオール街では、イタリアの極右政党「同盟」と極左政党「五つ星運動」の連立が、バーニー・サンダース氏とトランプ氏が組むようなもの、と表現される。
仮に再選挙となれば、実質的にはイタリアのEU離脱を問う国民投票となりかねない。そこで、この両党が勝利するシナリオが最も懸念される。
市場では、イタリア10年債利回りが3%を突破した。とはいえ、ギリシャ危機当時の7%台より遥かに低い。その差は、ECBが量的緩和でイタリア国債を40兆円相当以上、購入していることによる。これは、ECB保有国債総額の15%前後を占める規模だ。しかも、ECB量的緩和が今年9月まで継続されれば、更に毎月4千億円ほどイタリア国債が買い増される。
ECBは財政ファイナンスのための国債購入を禁じられている。この時期のECBによるイタリア国債買い入れは救済措置と見られかねない。しかし、一国の国債発行総額の1/3までは、「金融政策のツール」として購入を認められているのだ。
ここで、ECBがイタリア国債購入を停止すれば、市場の混乱を増幅する結果になるのは明らかなので、ECBの出口は遠のいた、との観測が目立つ。これがユーロ下落に拍車をかけている。
これは円高要因にもなるので、日銀の出口は益々遠のく可能性も指摘される。
なお、ECB以外にも、イタリア国債の長期保有者としてイタリア民間銀行とイタリア個人が挙げられる。
イタリア国債を大量に保有するイタリア民間銀行は、それを時価評価しなくてよい。イタリア個人も、政治混乱慣れしているので、国債不安で売却を急ぐ切迫感は薄い。
いっぽう、ドイツ10年債利回りは、一時米国10年債3%突破のあおりで、0.7%を突破していたが、現在は0.2%台にまで急落中だ。イタリア国債からドイツ国債への「マネー、質の逃避」が顕著である。
更に、リスク回避マネーは米国債にも流入。
3%を突破していた米10年債利回りも、2.7%台まで急落している。
最新FOMC議事録で利上げに慎重な意見が目立ったこともあり、年内利上げ回数も4回の確率が11%まで急落した。
その結果、リスク回避と日米金利差による円買いが出やすい市場環境となっている。日米株式も、そのあおりを受けて急落。
イタリア不安は、日本市場にとっても、他人事ではない。
こうなれば、金市場にもマネー流入となるはずだが、金価格は1,300ドルを割り込んだままだ。欧州政治リスクと利上げ観測後退となれば、もう少し上がってもよさそうなものだが。まずは、下げに歯止めがかかった、と言うべきか。