18日日本時間深夜25時前に流れたブルームバーグ電でNYダウは一気に360ドル超瞬間急騰した。

「中国、米国から今後6年で総額1兆ドル超の輸入増を米国へ提示。24年までには対中貿易赤字ゼロへ」との観測記事だ。「1兆ドル」と兆単位で丸めた数字、そして「対中貿易赤字ゼロ」は、そのまま、トランプ大統領が次期大統領選挙で成果として使えそうな表現だ。さっそくトランプ氏は、記者団に対して、早速「中国との対話は進展している」と語った。

17日には、「ムニューシン財務長官が、関税取り下げを政権内で議論」とのダウジョーンズ電観測記事が流れ、ダウ平均は200ドル超瞬間急騰したばかりだ。日本電産ショックから日本株を救った要因ともなった。

スクープ合戦の様相だが、結果的に、二日間でダウ平均は「米中通商交渉進展期待」により500ドルほど上昇したことになる。

問題は、この二つの観測記事の真偽性だ。

ありそうな話ではある。

年末年始の株価大変動は米中政権内にも危機感を醸成して、「市場友好的」な言動を誘発した、と解釈できる。

ムニューシン財務長官関連の報道も、政権内ライバル関係にあるライトハイザー通商代表に対する先制の動きと解釈できる。

とはいえ、本当に信用してよいのか。市場は熱烈歓迎しつつも当惑気味だ。機械は瞬間的に買い注文を発動したが、その後、人間のトレードは模様眺めで大きな変動はなかった。

二つの報道に「犬がクンクン嗅ぎまわっているごとし」

一連の報道のなかの表現だが、言いえて妙である。

米中共倒れリスクを回避するために、月末には中国副首相が訪米する。その時に、報道の真偽は明確になりそうだ。

筆者が注目したのは、18日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数の落ち込みだ。1月の速報値だが、前月の98.3から90.7と急落している。政府機関閉鎖で滞りがちな経済指標のなかで、民間機関発のデータは予定通り発表されるので今や貴重である。「データ次第」のFOMCが政府機関閉鎖のあおりで「データ不足」のなか、「夜間飛行」を強いられるリスクがある。

消費者信頼感指数急落は、株価には本来下げ材料だが、「利上げ後退観測の裏付け」とされ、寧ろ上げ要因との解釈が目立った。

米中関係進展情報といい、経済指標への反応といい、「売られ過ぎの反動」の理由付けとして使われた感も否めない。

いっぽう、上海株は、中国政府のなりふり構わぬ財政金融景気刺激策総動員により、米国株より下値は堅そうだ。いずれ中期的には債務膨張・財政悪化が臨界点に達するは必至なれど、市場目線では未だ先の話。「壮大なモラルハザード」のなかで、執行猶予つきの買いが見込まれる。

そして、日本株は、米中通商交渉進展期待と円安の追い風に恵まれ、日本電産ショックも回避された。もし、あの日、NY株が米中懸念で急落していたら、全く違った展開になったかもしれない。

「運も相場のうち」である。

円安については、外為市場では株高が円安要因の一つとされ、株式市場では、円安が株高要因とされる。鶏が先か卵が先か。いずれにせよ、うまくかみ合って、「買いの連鎖」が生じている。

外国人投資家の日本株売り攻勢も小康状態となりそうだ。

今週は日銀金融政策決定会合があり、最近の傾向として、欧米投資家が、FRB,ECB並みの関心を寄せている。日本国内では「無風」観測が強いが、海外では「次に出口に向かうのは日銀」との認識が先走り、外電観測記事で円がNY市場のアルゴリズム売買により弄ばれるリスクには要注意だ。

企業決算発表については、VIXが17まで低下している地合いのなかでは、株価大変動時には埋もれたしまったファンダメンタルズの相対的重要性が再び見直されている。

NY金は下落して1280ドル。調整局面だね。まだ一回表も終わってない。先は長い。今年は、相当、アップ・ダウンありそう。

 

なお、今日発売の日経マネー「豊島逸夫の世界経済深層真理」第85回に「歴史的相場大変動が示唆する相場の現実」と題して書いた。

 

雪模様が続くスキー場でも、里雪の日には、山は思わぬ快晴のこともある。長年の経験で、山雪か里雪か天気図でおおよそ判断できるようになった 笑

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