以下に、8月29日づけで朝日新聞に寄稿した原稿を採録しておく。


中国は世界一の金需要国でもあり、世界一の金生産国でもあります。
しかも、国内金生産量だけでは自国の膨大な需要を満たせないので、大量の金を輸入しています。
ですから中国抜きで金は語れません。
その中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が、昨年からほぼ毎月のようにコツコツ金を買い増しています。
なぜでしょうか。


中国は断トツで世界最大の外貨準備を保有しているのですが、その多くが米国の借金証文である米国債だからです。
巨額の保有米国債は、米中通貨戦争の武器になります。
もし、中国が米国債売却作戦を展開したら、米国経済は大混乱するからです。
しかし、うっかり、その武器を使うと、中国は自分の首を絞める結果になりかねません。米国債が売られ、その価値が下がって、巨額の損失を蒙るのも中国だからです。
そこで、苦肉の策として、米国債を少しずつ売却すると同時に、金を徐々に買い増す作戦をたて、現在進行形で実行中なのです。
米国債に不信任票を投じ、究極の資産とされる金に切り換えているとも言えます。


そこで中国人民銀行が長期計画でコツコツ金を買い増していることは注目に値します。
金価格は日々変動しますから、中国人民銀行といえど、まとめ買いは避け、買いを時間軸で分散しているわけです。
なお、金はスマホやパソコンの部品製造には欠かせない希少素材なので、中国は、長期的に希少素材の金を国家として「備蓄」もしています。
通貨の顔と、重要な産業用素材としての顔と二つの面を持つことが金の特徴でもあり、需要基盤が堅いことが、今年、国際金価格が史上最高値に接近している背景とも言えます。
結局、中国は国内の金鉱脈は計画生産で、地下希少資源を温存しつつ、世界各地で採掘された金を爆買いしているわけです。


中国では紀元前に製造・使用された金貨が博物館に展示されています。それに比べて、人民元は通貨の世界で新参者。しかも、人民元には60億元紙幣が乱発され、ハイバーインフレを引き起こした苦い歴史があります。
銀行博物館には、その紙屑同然の紙幣と、下の丸窓に一握りの米が展示されています。当時(1949年)の60億元の購買力を分かりやすく示しているのです。
こういう歴史を経て、中国人が、人民元より金を信じる傾向が醸成されてきたのです。
現代の日本では、日銀の量的緩和政策で、紙幣がばらまかれました。中国のような超インフレにはなりませんが、1万円札の実質価値が希薄化していることは覚悟すべきでしょう。
北朝鮮や台湾有事に備え、金を少しづつ蓄えてゆく「貯金」感覚で、例えば、女子会一回分のおカネを毎月、金買いに振り向ける程度のことから始めることを勧めます。

 

60億元紙幣と丸窓の中の一握りの米
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60億元紙幣と丸窓の中の一握りの米

さて、筆者が札幌長期滞在のたびにお世話になっていた札幌駅隣接の商業施設エスタが昨日閉館となり、多くの札幌市民が惜しみ集まり、閉館が30分も遅れたそうな。
全国版ニュースにもなっていた。


札幌エスタ、31日閉店 隣の東急百貨店にテナント大移動:日本経済新聞


デパ地下みたいなところで、あそこのサザエの鯛焼きが筆者の好物で、列に並んで出来たてホヤホヤを買って食したものだ。
「たい焼きの聖地」と筆者は呼んでいた(笑)
新幹線乗り入れの影響で、札幌駅構内にあった、「札幌ぽっぽまんじゅう」のコーナーも無くなってしまった。
あの黒糖風味の味がカラダに沁みたものだ。寂しい。