先週金曜日に発表された最新雇用統計は、概ね米国労働市場の底堅さを映す結果となった。
国際金価格はKITCOグラフの赤線、緑線の如く下げている。
(円建て金価格は円安で下がりにくい)。
非農業部門新規雇用者数は43万人。
先月、先々月分の大きな下方情報修正もなく、市場は安堵。
失業率も3.8%から3.6%へ低下。
賃金も年率5.6%と増加基調続き、労働参加率も62.4%と微増。
これについての評価は、感染を嫌う人たちが、賃金も上がり、労働市場に戻って働く気になったとポジティブに見るか、或いは、インフレが賃金上昇にも浸潤して、労働参加率の伸びも十分ではない、とネガティブに見るか。
意見は分かれる。
金市場では、労働市場が堅調で、過熱リスクが懸念されるとして、5月0.5%幅利上げの見方が更に拡散して、金利を生まない金には逆風となった。
とはいえ、市場では、インフレ対応で後手に廻ったパウエルFRBが利上げをやり過ぎて、不景気になるシナリオも懸念される。
その「不況の兆し」とされる現象が、ドル長短金利逆転現象だ。指標となる米10年債と2年債の利回り格差が、僅かながらマイナスに転じる場面が出始めたのだ。
過去の事例では、この「逆イールド現象」が起きると、12か月から16か月後に不況になっている。とはいえ、タイムラグがあり、直ちに不況になる事例ではないので、執行猶予付き判決ともいえる。
総じて、株式市場は、まだ深刻な話ではないと受け止めているが、債券市場は警戒ムードが強い。
金市場では中期的に見れば、リスクオフで買われる可能性がある。
結局、パウエルFRB議長が金融引き締めで米国経済のソフトランディング(軟着陸)に成功すると信じられる人は株を買い、信じられない人は、インフレが制御出来ずハードランディング(激突)となるケースに備えて、ヘッジとして金の買いに廻る。
かくして、金利上昇を懸念する金弱気派と、インフレ悪化を懸念する金強気派に分かれ、国際金価格は1,900ドル前半のレンジで推移している。
中期的には、名目金利上昇がインフレに追い付かなければ、実質金利マイナス幅拡大の状況で金は2,000ドルに向かうシナリオと、名目金利上昇ペースが早すぎて、実質金利マイナス幅が縮小して1,800ドルに下がるシナリオに分かれているのだ。
さて、今日から東京証券取引所が大幅に模様替えするが、これで、「外国人マネーが日本株取引の約7割を占める」という歪んだ構図は変わらない。
模様替えではなく、どれだけ、日本人がマーケットでリスクを取れるか。
海千山千の外国人投資家軍団と対峙するリスク耐性が問われている。
日本人の多くは、今日買った株が値下がりすると目の前が真っ白になる初心者タイプだ。
これは民族的DNAともいえる。
東証が発表する日本株売買統計を見ても、毎回、まず外国人の買いで上がり、その後に日本人の買いが続き、そこで外国人側が売りに回り、結局、日本人側は高値掴みする傾向が顕著だ。
だからこそ、地味に買い増す資産運用が日本人には合っているわけだ。
がっつり投資は、いわゆる「つわもの」タイプ向き。
日本株市場も、プロとプロの「空中戦」が連日繰り広げられている。
特に株式市場の知識も経験も豊富ではない堅気の素人衆は、株式積立投資に徹するべきだ。