筆者がかつて勤務していたワールド・ゴールド・カウンシルの前身はインターゴールドという南アの金の会社だった。
その頃の南アは金生産量が年間1,000トン近くで世界のシェアは7割を超えていた。
しかし、その頃の南アはアパルトヘイトという黒人と白人の人種隔離政策を採り、世界の非難を浴びていた。
南ア製品がボイコットされていた。
その悪評高いアパルトヘイトが撤廃され、ネルソン・マンデラ氏が人種平等の社会を理想に掲げ新しい南アが船出。
しかし、黒人と白人が一緒に暮らすようになると、黒人は白人との生活格差に唖然として、不満が逆に高まり、治安は悪化する結果となってしまった。南アは悲しい国だと感じた。
その後、南ア社会は黒人主導となり、貧困は逆に厳しくなってゆく。
暴動・略奪・鉱山での暴力的ストライキ頻発。
ここ数年、南アには行っていないが、国内情勢は益々悪化している。
プラチナ価格が跳ねた一昨日もウォール・ストリート・ジャーナルが大ぶりの記事で今やプラチナに依存する南アの貴金属生産会社の実態や社会情勢を詳細に報じた。
その記事を読み、プラチナ生産にも影響が出ているので、プラチナを買ったという投機家も少なくなかった。
南アでは警備会社が実弾発砲する。
日本では、警備会社のステッカーが玄関口に貼られるが、南アは、それにピストルのイラスト。
住宅に近づいたら撃つぞ、という威嚇。
私が、うっかり住宅に近づいたら、同伴の知人が、冗談じゃないぞ!と真剣に止めにはいった。
高級住宅街では、家屋が刑務所みたいな壁で囲まれ、子息が通う学校が徒歩5分なのに車で送り迎え。
そういう事態が今や更に悪化して、今週は、ヨハネスブルグで警官1800人を動員する態勢となったという。
金生産量も、年間1,000トンが今や25トン!
地下2,000メートルの深い鉱山で採掘する高度の技術を持つ南アのマイニングエンジニアたちは南米やロシアの金鉱山にリクルートされている。
金に代わってプラチナが重要な貴金属資源となったが、その生産にも障害のリスクが生じた。
コロナの影響と慢性的電力不足も厳しい。
その間、大手鉱山会社のCEOにウォール街の金融のプロたちが指名される時代もあった。
しかし、結局、南アには馴染まなかったようだ。
南アでもケープタウン地域は、実に美しい景色だ。
ゴルフ好きの筆者は、南アのゴルフ場を堪能した。知人友人も多い。
それゆえ、南アの凋落は悲しい。
今や、プラチナもパラジウムも、投機筋が価格形成力を持ち、理屈無用とばかりに荒らしている。
後講釈で新たな自動車需要など需給を語れども、虚しい。
それゆえ、そもそも金より希少性が遥かに高いプラチナが金より遥かに安いということを筆者は受け入れ難かったが、事実として市場で価格が決まっているゆえ、受け入れざるを得ない。
それでも、プラチナに対する憧れ感とかプレミアム感は根強く残る。
クレジットカードでもプラチナ会員は間違いなくゴールド会員より上の扱いだ。
プラチナよりパラジウムの価格が高くなっても、プラチナチケットやプラチナ世代という名称が、パラジウムチケットとかパラジウム世代とはならない。
それからプラチナ、パラジウムは市場規模が金より遥かに小さいので、価格を動かしやすいのは事実だ。
業界では、まとまった現物を持った者が圧倒的優位に立つ。それゆえの旨味もある。
いずれにせよ、筆者は、I love Platinumの思い入れが断ちがたく、客観的に市場を見られないので、まともなコメントは避けていることは、以前にもこのブログに書いたとおりだ。
筆者にとって、プラチナの素材としての価値は変動しても、センチメンタルバリュー(感情価値)は変わらない。
皆さん、プラチナは長期保有しましょう。
次の世代には、再び金より高くなるかもしれません。
1,000ドルになったの、ならないので、騒ぐのはみみっちいよ(笑)
プラチナには夢がある。
対して、パラジウムはビットコインみたいに投機的売買で値動きが荒いから、素人衆でも、ツワモノ限定です。