昨晩のNY市場では、米供給管理協会(ISM)発表の6月非製造業総合景況指数が60.1。これは前月の64、更に市場の事前予測中間値63.5も下回る数字。米国経済の活動拡大ペースが鈍化していることを意味する「悪い金利安」だ。金利は経済の体温計と言われる。
今回の指数では、雇用の指数が縮小に転じ、新規受注の指数も低下した。但し、外食、宿泊、旅行などサービス業への需要は底堅いと言える。対照的に、不動産と農業部門が弱い。
この「悪い金利安」は、筆者の想定外の展開で、今後も続くのか、注視しているところだ。筆者が想定していたのは「悪い金利高」。米国債が超増発され、欧州金融危機のときのギリシャ国債のように、買い手がつかず、国債利回りは急上昇するというシナリオだ。今年も米国10年債利回りが一気に1.7%まで跳ねたときには、いよいよ来たか、と思った。しかし、その後、ドル長期金利はじり安傾向に転じている。
結局、現時点での米国経済は、コロナ禍から再開が急速に進むことで生じる経済過熱(インフレ)リスクと、物価も金利も上がらない構造的経済停滞(ディスインフレ)リスクの狭間で揺れている。
国際金価格も、金利上昇による下落圧力と、金利下落による上昇圧力に挟まれ、一進一退だ。
昨晩も一時は1800ドル台を回復したものの、その後の買いが続かず、結局1790ドル台で引けた。(KITCO金価格グラフの緑線)。示唆的な市場展開である。
なお、昨晩は、インド株リスクも改めて意識された。
ワクチン接種が最も進んでいるとされるイスラエルが、ファイザーワクチンの対インド株変異種効果は通常の90%台から60%台に落ちると発表したことが材料視された。イスラエルでは、ワクチン接種にもかかわらず、ここにきて、インド株感染が急増中だ。但し、重症者数は変わらないので、重症化リスクを減らす効果は確認されたと言っている。
これは、日本人にとっても他人事ではないね。仮にワクチンの変異種感染減少効果不十分とされれば、今の「やっとコロナから解放される」という高揚感も一気に冷めてしまう。日米株価も昨日から今日にかけて冴えない。こんな理由で、仮に金価格が安全資産買いで上昇しても、ちっとも嬉しくない。
まぁ、今後の要経過観察処分としておこう。