スポットでも1800ドル突破

7月2日、本欄で事前リークした「金ETF残高、1-6月期730トン急増」が、昨日正式発表され報道が世界を巡りました。金ETF世界の総残高は3400トンほどで、ちょうど年間金生産量に匹敵する数字になりました。
今は、734トンも買われたということで、市場には「高揚感」が強いですが、ここは冷静に見る必要があります。
既に前回指摘しておいたように、このうちの半分程度は、ヘッジファンドの保有で、早晩売られますから、要注意です。
海外の報道を見るに、単に残高が増えたという内容ばかりで、冷静な分析に欠けています。
「高揚感」から、今や市場用語として定着した「根拠なき熱狂=irrational exuberance」の事例にもなりそうです。
短期的には、市場の熱狂感により、これから史上最高値更新とか2000ドル突破とか、十分にあり得ます。私も取材には、そう答えています。
しかし、個人投資家にとって最も重要なことは、史上最高値つけるか、つけないか、ではなく、持続できる価格水準が、どの程度であるか、ということでしょう。
私は、年内は高値圏が続いていますが、2021年には1500ドル程度まで下げると見ています。これは現時点での予測で、今後、次期大統領の政策綱領とかワクチン開発状況で、事情は大きく変わる可能性があります。
金ETFの歴史を見ても、流入、流出が繰り返されてきました。

価格が下げに転じた場合には、今話題の金ETFから巨額の資金が流出することになるでしょう。1-6月期に4.2兆円相当が流入したということは、巻き戻しに入ると、その半分の2兆円程度が流出する可能性があります。過去の事例を見ても、2013年には世界の金ETF残高が2500トンを突破しましたが、その後、2015年には1500トンほどまで急減しています。その間、金価格は1100ドルを割り込みました。
需給統計では、金ETFが現物需要としてカウントされていますが、質的には中国インド、ドバイなどの現物需要と決定的に異なります。金ETFは欧米投資家中心で、年金基金以外は、単なる売買益を追求します。対して、新興国の金需要は、文化的な金選好度の高さという裏付けがあるので、基本的に長期保有です。需給統計を分析するときには、単なる数字だけではなく、その質的違いを認識することが不可欠なのです。
いずれにせよ、国際金価格は、1800ドル台から、実質的に海図なき航海に乗り出します。短期的乱高下幅は拡大して荒れた相場展開になるでしょう。
こういう時期こそ、長期計画で積立感覚の毎月金買い増しがベストな選択だと思います。

金のグラフ

最後に今日の旨いもの写真。サザエとイワシ。イワシは脂がのり、鮮度抜群で絶品でした。サザエは久しぶり。コリコリ感が口の中で心地よい。ゆきつけ誠鮨@お茶の水。

鮮魚