本日午後1時にトランプ政権は対中制裁関税340億ドルを発動した。市場には織り込み済み。
実は、マーケットが気になることは、米国債の異変だ。
かねがね指摘されてきた米長短金利差縮小。
イールドカーブのフラット化。更に金利差逆転の可能性。
昨晩は10年債と2年債の利回り格差がついに0.3%の水準を割り込んだ。
NY市場終了時点で、10年債が2.836%、2年債が2.549%。
直近のトレンドを見ても、10年債は2.8%台前半までジリジリ下がっているが、2年債は2.5%台後半をジリジリ上昇中だ。
並べてみても、30年債 2.949%、10年債 2.836%、 5年債 2.733%、2年債 2.553%。2%台の水準で利回りが異常に接近している。
昨日も、FOMC議事録で貿易摩擦が懸念されても利上げは継続の方針が確認され、相関の強い2年債の利回りが上昇。
いっぽう、10年債のほうの上げは限定的だ。
本当に利上げ続けて大丈夫なのか。
市場が気になる一節がFOMC議事録の中にあった。
「FOMC参加者の数名(some)は、潜在能力を超えて長期間推移する経済が、インフレ圧力を高め、金融システムが不安定化して、遂にはかなりの経済後退を招く懸念を表明した」
まさに、イールドカーブのフラット化が暗示するシナリオだ。
ちなみに、FOMC議事録も、かなりのスペースを割いて、長短金利差縮小について活発な議論が展開されたことを記している。
FRB調査スタッフがこの問題についてプレゼンテーションした後で、参加者が侃侃諤諤の議論を交わしている。
歴史的に景気後退の前兆とされる事象ゆえ無視は出来ない。
とはいえ、その統計的有意性には疑義も根強い。結論が出るはずもなく、両論併記で終わっている。
かねてから、市場内には、「米国国内経済基調は絶好調」の認識は強く、それだけに、「良すぎる経済」の孕むリスクも意識されてきた。
景気循環サイクルの最終局面と捉えれば、2019年後半が危ういとの見通しは、NYで14社のヘッジファンドを訪問したとき、ひんぱんに提示された見解であった。
年内はまだ株ロング(買い持ち)で引っ張ってゆける。
しかし、来年は、エクスポージャー(株への露出)を減らす意向との意見があちこちで聞かれた。
貿易戦争リスクは、特に投資家のセンチメントを冷やすが、長短金利差縮小は、経済の症状が「経過観察」の置かれていることを示す。
それだけに、ジワリ効く材料ともいえる。
「年末まではパーティーに参加するが、出口に近いところに陣取る。」
2018年後半は短期売買に徹して、稼げるうちに稼ぐ、との本音が透けた。
2019年は金を取り巻く市場環境も変わる。