国際金価格はスポットで2,120ドル台。史上最高値圏で推移している。
今回の金急騰の理由だが、特にドル金利安とかドル安とか、通常の金価格上昇要因では説明できない。
決定打に欠ける金急騰に危うさも漂うが、筆者の長年の経験では、説明できない相場は意外に長続きする傾向があることも否定できない。
考えられる上昇要因としては、まず、昨晩は、NY株が急落した(それでもNVIDIAだけは上昇して、半導体相場の根強さを見せつけたが)。
NY株の高値バブル不安とも表現できる。


次に、スーパーチューズデーの前日に、金相場が噴火したことも、偶然で片づけることはできまい。
保守派判事の多い米最高裁が、トランプ氏の予備選参入を認めた結果、いよいよバイデン対トランプ、81歳対78歳のガチンコ大統領選になった。
バイデンは、若手の共和党候補が彗星の如く現れるより、年寄同士の戦いに勝機ありと見ているので、この展開に歓迎姿勢だ。
トランプはとにかく押しまくり。
どちらに転んでも、世界のリスクは増えるばかり。金が買われる理由も増えるばかり。
そして、ビットコイン。
デジタルゴールドと言われ、金とライバル関係にあるとされるが、今回ばかりは、同じタイミングで最高値圏にある。
更に、NYの地銀、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープの株価が急落して、地銀信用不安が再燃の兆し。
特に商業用不動産への過剰融資が懸念されているが、昨日は同株価が反発している。
まだ、昨年のような信用不安に発展とはなっていない。要経過観察だ。


そして、中国では全人代。
いかに取り繕っても中国経済悪化により、世界にデフレを輸出している構図は変わらない。
米国の経済指標も、不況の可能性を示す数値が出始めており、米中景気後退(米国の場合は軟着陸難路と表現されるが)、最悪、共倒れの可能性が金には買い要因となる。
FRBが結局インフレ鎮静化に失敗するシナリオも絵空事とはいえない。
FRBへの不信を映す金高騰の側面もある。
かくして、利下げの開始時期とか回数とかの話とは別の展開で、金価格が急騰しているわけだ。
複合要因だけに「一過性」では片づけられない。
そして150円の円安は続いており、円建て金価格も一日で200円以上の急騰劇を演じた。


なお、今週は、米国重要経済指標が目白押しで、いつ、史上最高値突破しても不思議はない。
筆者もNY市場の仲間たちと連絡を取りながら、モニター画面から目が離せない状況だ。
とにかく突然、理由もなく、金価格が10ドル、20ドルと乱高下する地合いゆえ、気を抜けない日々である。


海外金価格が史上最高値を更新したとの記事も、フィナンシャル・タイムズやロイターに出ている。
現物価格ベースでは更新だが、NY先物価格(最も取引の多いアクティブマンス)ベースでは未だ更新されていない。
いずれにせよ、歴史的最高値圏にあることが重要で、更新したか否かは報道機関による。