まず、週刊エコノミスト誌今週発売号のカバー記事に冒頭コメントしている。
コロナウイルスと中国経済について。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200310/se1/00m/020/053000c
結構インパクトある写真を使っている。
 

そして、黒田総裁、ヘッジファンドを征すの本文。
ヘッジファンドがくやしがっている。
「ミスタークロダに技ありを決められた」
これぞクロダ・マジック。
昨日東京市場オープン直後、ヘッジファンドがこれから株売り攻勢をかけ、日経平均2万円の大台を首尾よく切り崩そうかと、勇み立つ局面に、僅か140字余りの短文で冷水を浴びせた。
「潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努める」

 

総裁談話

四の五の言わず、というより、言い難い状況だ。めぼしい金融政策はほぼ出尽くしている。
だから、後は想像に任せる、とばかりに短文で締めた。
朝一というタイミングに、切れ味良い「技あり」が決まった。
しかも、前週のFRBパウエル議長の「利下げ宣言」に続く流れとなり、結果的に日米協調緩和の印象を市場には与えた。
NY市場では、週末に主要中銀が協調危機対応声明を出すのではないか、との観測も流れていた
この異例の「談話」で、市場は一気に二頭の鯨(日銀とGPIF)探しモードに突入したのだ。
日銀のETF買いはいつ、どれくらい、入るのか。市場は先走り気味に期待を込めて「談話」の解釈に走る。
株価は「オセロゲーム」のごとく、前日比マイナス圏からプラス圏に転じた。
この「談話」を薬に例えれば、痛み止め。
よく効くが、コロナウイルスの病巣には効かない。
副作用は市場の緩和依存症。使用上の注意は使用者が考えて服用せねばならない。
飲み続けると合併症は長期限定の悪性インフレ腫。ここが金の出番となる。
次期日銀総裁は貧乏くじ引くのかもしれない。


そして、昨日、その後の展開。ウォール街では、株売り連鎖止めた黒田総裁は「ヒーロー」扱いとなった。
さて、昨日のNYダウは日本時間早朝から始まった時間外で1,000ドル超の乱高下を演じ、NY取引時間中にも1,000ドル以上の変動幅を記録した。
一日で1,000ドル超の価格変動が2回も起こったのだ。
コロナウイルスという未体験のリスクに対峙する市場の視界不良から生じる不安感は容易に払しょくされない。
それでもNY市場ではほぼ一貫して買われ続け1,293ドル高で引けた。
FRB,日銀、そしてECBも協調緩和の姿勢を見せてきたことが最大の要因だ。
ここでは、最も不安視された2日の東京市場開始直後に「総裁談話」を発表して、株の売り連鎖を断った黒田総裁の「英断」がNY市場では評価されている。
日米協調緩和の姿勢を印象づけたからだ。
先週末の段階で、週末には主要中銀の協調声明が発表される可能性が話題になっていたので、市場の期待に応える「総裁談話」ともなった。
既に、市場は2週間後に迫った3月FOMCで0.5%、或いは0.75%!の利下げを市場は見込んでいる。
日銀には過去最大級のETF買い入れ継続を市場は期待している。ECBは寄合所帯ゆえラガルド総裁は内部意見調整に手間どっているようだが、マイナス金利深堀り、止む無しとの意見が発せられている。

とはいえ、金融政策は、経済の需要サイドで市場心理(センチメント)を改善する効果が見込めるが、供給サイドでサプライチェーン修復などに直接的貢献は望めない。
それゆえ、市場では、売られ過ぎの株を買い始めるが、ヘッジとして安全資産の米国債も買っておく、との投資家心理が顕著だ。
米10年債利回りは一時1%の大台に接近する局面もあった。
しかも、米国での感染者数の実態は未だこれから明るみに出る段階だ。
NYでは初の感染者が出た。ロードアイランドでは、イタリア修学旅行帰国後3名の感染者が確認され参加同行した38名が検査中だ。
米国内でも警戒感が高まり始めた。日本と同様に消費者の買いだめ現象も勃発している。これは危機感をいだく人間の本能的行動なのだろうか。
コストコ株が9%も急騰している。いっぽうで、航空・クルーズ関連の株価は軒並み安い。総売りとなった先週に比し、市場の景色が変わってきた。
果たして、この反騰はホンモノか。
改めて、こう問われると多くの市場参加者は「まだ確証はない」と答える。
「相場は絶望で芽生え、悲観で育ち、楽観で成熟して、歓喜に終わる」との相場格言がある。
先週までの2週間ほどで、NY市場は歓喜から絶望の過程を体験した。今週は絶望から悲観への兆しが見られる。
米国ではステイ・ホーム経済(’stay-at-home’economy )なる新語も生まれた。
在宅・巣ごもり経済とでも訳せようか。
人混みに近づかない。不要の旅行はしない。
外出の機会減るので個人消費は伸び悩み、マクロ的には縮小均衡に向かっている。
こじんまりと纏まるステイ・ホーム経済が当面続きそうだ。


このような市場環境で、金は1,600ドル近くまでジワリ買い直されている。
有事の換金売りがほぼ一巡すると、新規買いが徐々に入って来そうだ。