今週の市場は二人の米国人タカ派の動きに注目している。

一人はFRBパウエル議長。10月に「現在の政策金利は中立金利からは程遠い」と発言。米国株価大変動の火付け役になった。昨日、ニューヨーク・エコノミック・クラブでの講演が、今週市場の二大イベントの一つとして注目されていた。

もう一人はナヴァロ米国家通商会議(NTC)委員長。対中強硬派で、ホワイトハウスのタカ派だ。こちらは、もう一つのメイン・イベントとされるブエノスアイレスでの米中トップ会談に関して、言動が注目されている人物だ。

昨日は、ニューヨーク・エコノミック・クラブでパウエル氏が講演。

10月発言から180度転換ともいえる「現在の政策金利は中立金利に近い」とあっさり言ってのけた。この豹変ぶりが、前任者のエコノミスト出身イエレン氏とは異なり、実務家肌らしい。市場は、株価急落の「元凶」とされた発言が事実上撤回されたことを素直に歓迎。ダウ平均が前日比600ドル超の急反発を見せた。結果的に、10月パウエル発言からの下げ幅を取り戻す方向に動いている。NY金はドル安を映し1220ドル台に反騰した。

では、マーケットの次の一手は?

ここはトランプ・習近平会談の結果次第といえよう。

マーケットはホワイトハウス内部のタカ派・ハト派の主導権争いに注目する。

トップ会談実現への過程では、ナヴァロ国家通商会議委員長と、ハト派クドロー国家経済会議委員長がま真向から対立する局面もあった。

元ゴールドマンサックス幹部やブラックストーンCEOらウオール街重鎮が北金京に招かれ、米中経済緊張緩和のための方策を議論したことを、ナヴァロ氏は強烈に批判。「ウオール街の銀行家やヘッジファンドが、G20前に勝手に動き、トランプ大統領が取引に応じるように仕掛けている。」と非難し「悪臭がする」とまで言い切った。

対して、ウオール街出身のクドロー氏は「それは的外れの見解」と一蹴した。

ゴールドマンサックス出身のムニューシン財務長官も対中ハト派とされる。

報道では、トランプ氏とムニューシン氏の不協和音も顕在化してきた。このホワイトハウスの内紛では調整役として娘婿のクシュナー大統領上級顧問の動きが注目されている。

 

なお、トランプ大統領のパウエル氏批判はエスカレートの様相だ。

トランプ経済政策のおかげで上昇した株価を崩した主犯は利上げ決断したパウエル氏と決めつけるごとき発言が繰り返される。

それゆえ、昨晩のパウエル氏「ハト派への転換」が、「ついにトランプ氏の圧力に屈したか」と見られがちだ。

当のパウエル氏は、利上げ決断は、あくまで「経済データ次第」と明言している。

前任者イエレン氏と同様の姿勢だ。但し、FOMC参加者の金利動向予測分布を示す所謂ドット・チャートは、新パウエル体制で、相対的に存在感が弱まりそうだ。将来の金利動向を天体観測にたとえ、その難しさを表現しているからだ。昨日のニューヨーク・エコノミック・クラブでの講演後の質疑応答でも、「あなたが注目する星座はどれか。雇用か、物価か、株価か」と聞かれ、どれも重要と答えていた。

いっぽう、来年から毎回FOMCごとに必ず記者会見を開くことにして、全てのFOMCが「ライブ」と語っている。刻々変動する経済情勢に臨機応変に対応する姿勢である。市場にとっては、その分、乱高下の回数が増える可能性があるので、身構えざるを得ない。ヘッジファンドにとっては、暴れる機会が増えるので、歓迎すべき変化のようだ。

 

このタカ派対ハト派対立の構図は、2019年相場動向を占ううえでも見逃せない。昨日は、そのプロローグとでもいえようか。

 

今日の写真は、早くも冬の名物。グジの蕪(かぶら)蒸し。@祇園「らく山」。これは、かきまぜた状態で食べると更においしい。あったまるね~

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