HOME > 池水雄一の貴金属講座 > 2018年 > 「ロンドンプラチナディナーとプラチナ最新の需給状況」

豊島逸夫による金市場の解説

2018年06月13日
「ロンドンプラチナディナーとプラチナ最新の需給状況」

先月514日の週、毎年ロンドンで開かれるプラチナウイークに行ってきました。これは世界中からプラチナのビジネスにかかわる人々がロンドンに集まってきて、交流をする一週間です。その機会にプラチナ業界の中心になる企業や銀行が朝食、昼食、夕食会を開き、さまざまなセミナーや情報分析会社によるレポートの発表があったりします。マーケットの中心にいるトレーダーである銀行やコモディティ商社は言うまでもなく、南ア・ロシアの鉱山会社から世界中の精錬会社、そして触媒のユーザーである自動車会社、投資会社(ファンドなど)にいたるまでまさに川上から川下まで、さまざまな市場参加者が集まり、情報交換にいそしむのです。

 

London Platinum Palladium Market Cocktail Party @ Guild Hall

20180613-1.png

 

20180613-2.png

 

私は毎年この週はロンドンに行き、いろんな人々とマーケットに関する情報交換をする機会となるのですが、今年は例年と少し雰囲気が違いました。例年、たとえプラチナマーケットがぱっとしない時でもここに集まってくるプラチナ関係者は、みんなプラチナに関しては楽観的で、強気の予想をする人間が多いのですが、今年は例年になく弱気な予想をする人間が多く、それが非常に印象的でした。やはりプラチナの置かれた厳しい環境にさすがにマーケット関係者も悲観的にならずを得ないというところまで来たのかもしれません。しかし、これまでみんなが強気で結果的に相場は下がってきたことを考えると、これは逆に相場が反転するサインかもしれません。来年のロンドンプラチナウイークではプラチナはどこにいるのか、そして業界関係者の見方がどうなるのか、楽しみです。

 

(ドル建てプラチナ相場過去1年)

20180613-3.png

 

(円建てプラチナ1年)

20180613-4.png

 

 

Metals Focus Platinum & Palladium Focus 2018

 

プラチナウイークに発表されたMetals Focus社の年次レポートであるPlatinum & Palladium Focus 2018」から最新の需給と今後の見通しをみてみましょう。

 

(プラチナの需給)

20180613-5.png

 

上の表は過去10年の需給の動きと今年の予想の数字です。まず供給サイド、鉱山生産ですが、毎年180-200トンの間での推移となっています。唯一156トンと大きく落ち込んだ2014年は南アでの長期間に渡る鉱山労働者のストライキがあった年でした。しかしそれ以外ではほぼ一定しており、触媒、宝飾といった各需要分野からのスクラップ回収からの二次供給も非常に安定しているといえます。

需要サイドに目を向けるとこちらも安定していますが、自動車触媒分野では欧州でのディーゼル自動車のシェアが確実に減少しつつあります。2011-15年には50%を越えていたものが昨年は45%まで下落、そして今年2018年の3月現在での推定によれば37%にまでその割合は下がっているということです。中国でのトラックなどでの触媒需要の増加である程度はカバーされていますが、世界のプラチナ自動車触媒需要の52%を占める欧州での落ち込みはじわじわとプラチナマーケットに響いてきています。数字の上では触媒需要の減少は押さえられたものとなっていますが、これからの需要にとっては最大の分野であるだけに懸念が残ります。

 

また自動車触媒に次需要分野である宝飾需要は2013年にそのピークである77.7トンを記録してから、一貫して下げに転じました。その最大の原因は、宝飾需要の80%を占める中国のでの需要が4年連続で減少、2017年は前年比7%の需要減少となりました。習近平政権の反腐敗政策による宝飾品全体への影響、そしてゴールド宝飾品との競争にプラチナが負けているということもその原因になっています。

現物投資需要も2015年の22トンを天井として減少の一途をたどっており、2017年は9.5トンと10トンを割り込んでいます。プラチナの相場の低迷が投資意欲の減退につながり、それが一層の相場の低迷につながるという悪循環にあります。

プラチナの需給のバランスはほぼ見合っているかもしくは若干の供給過多の状態にあります。そのため、ここ数年の地上在庫は250トンから260トンの間で推移しています。この量はほぼ13か月分の全需要をまかなえるだけの量であり、プラチナにほとんど物不足のタイト感がないのはこのせいだといえます。そしてこのMetals Focus社の需給統計のこれまでの流れと2018年の予想をみてもこの状況は続きそうです。需給状況からプラチナが上昇するとは考えにくい状況にあります。

 

「生産コスト」

一方プラチナの鉱山生産コストはこのレポートでは全世界平均は2017年は909ドル、南アだけを取り出すと978ドルとなり、現在の相場で完全にコスト割れということになっています。

 

「今後のプラチナの相場の鍵」

最後にプラチナの置かれた現状を整理し、今後の展望を考えてみましょう。

 

•ファンダメンタルズ(需要と供給)は余裕がある。地上在庫も上昇傾向にあり、現在1年分の需要以上の在庫が世界に存在しており、現物不足による価格の上昇は起こりにくい状況にある。

•生産のほぼ8割が南アと南ア周辺地域であり、南アランドの動向が南ア生産者に与える影響は大きい。2018年半ばに来てランドが再び1ドル13ランドと弱含んできており、南ア生産者にとってはランド建てプラチナが上昇傾向にあり、彼らにプラチナの売却をうながす状況にある。

 

(南アランドとプラチナ)

20180613-6.png

 

 •強気になれない材料が多い一方、過去5年間の動きをみてみると、900ドルという生産コスト以下では確実にマーケットは下げ止まっており、900ドル割れはあるとしても一時的。現在の相場はまさに底値圏にある可能性が高い。

 

(プラチナ生産コストと過去5年の値動き)

20180613-7.png

 

•総合的に考えるとプラチナは底値に近い安値に放置されているが、需給や投資家の動きを考えると早晩にこの低迷から抜け出すのは困難。長期的に投資するのは意味があるレベルであるが、短期的にはしばらくは800-1000ドルという過去2年間のレンジがまだ続くであろう。

•電気自動車(EV)とのライバルとしての次世代エンジンと目されている燃料電池(FCV)は全く触媒のいらないEVとは大きく違い、触媒として大量のプラチナを使う。今後の時世代自動車の流れ次第ではプラチナの需要が大きく伸びる可能性がある。

•触媒としての性能はパラジウムよりもプラチナの方がはるかに優る。ガソリンエンジンの触媒にパラジウムが使われているのは、ガソリンエンジンにはパラジウムの性能で十分であったこと(ディーゼルエンジンはパラジウムでは役不足であった)、そして何よりもパラジウムの方がはるかに(一時はプラチナの5分の1)安かったためである。現在パラジウムがプラチナを逆転し、これが長く続くとすれば当然パラジウムからプラチナへの乗り換えの動きが出てきて当然です。しかし現在の触媒生産ラインがパラジウムになっているために、変更のコストと時間を考えるとそうそう簡単にはそれをプラチナに変更するわけにはいきません。しかしこの逆転幅がより大きくなり、一年以上続き、今後もこの価格関係が続くという見方ができるのであれば、おそらくこのプラチナ代替への動きが本格化し、プラチナの価格をささえることとなるであろう。

 

以上

  • ●本サイト(http://kikinzoku.tr.mufg.jp)は、「純金上場信託(現物国内保管型)」 (愛称:「金の果実」) ・「純プラチナ上場信託(現物国内保管型)」 (愛称:「プラチナの果実」)・ 「純銀上場信託(現物国内保管型)」 (愛称:「銀の果実」) ・「純パラジウム上場信託(現物国内保管型)」 (愛称:「パラジウムの果実」) (以下、4商品を総称して「『金の果実』シリーズ」または総称して「純金/純プラチナ/純銀/純パラジウム上場信託」または「本商品」または「貴金属上場信託」といいます。なお本サイト内においては、個別商品について「純金/純プラチナ/純銀/純パラジウム上場信託」「純金上場信託」「純プラチナ上場信託」「純銀上場信託」「純パラジウム上場信託」「Japan Physical Gold ETF」 「Japan Physical Platinum ETF」 「Japan Physical Silver ETF」「Japan Physical Palladium ETF」 と称する場合があります)に関する情報の提供を目的としており、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
  • ●「純金上場信託」「純プラチナ上場信託」「純銀上場信託」「純パラジウム上場信託」はそれぞれ別の地金(金・プラチナ・銀・パラジウム)を裏打ちとした個別の商品です。
  • ●本サイトにおける「日本初」とは、日本の金融商品取引所に上場されている商品のうち、日本に貴金属現物が保管されかつ貴金属現物に転換(交換)可能な商品として初めてであることを言います(2014年4月1日現在。三菱UFJ信託銀行調べ)。
  • ●本サイトは、特定の金融商品等の取得・勧誘を目的とするものではありません。
  • ●本サイト掲載の数値・グラフ等は過去の実績・状況であり、将来の市場環境・運用成果等を示唆・保証するものではありません。また、税金・手数料等を考慮しておりませんので、最終的な投資成果を示すものではありません。
  • ●本サイトの内容は作成基準時点のものであり、その以後予告無く変更または廃止される場合があります。また、この資料に掲載されている情報の作成には万全を期していますが、当該情報の完全性を保証するものではありません。
  • ●当社は、本サイトに含まれる情報およびそれを利用したことにより発生するいかなる費用または損害等の一切について責任を負いません。
  • ●本サイトの一切の権利は当社に属しており、目的を問わず、無断複製・転載を禁じます。

【ご注意下さい】

  • ①当社店頭窓口では本商品のお取り扱いはしておりません。本商品は東京証券取引所に上場されている商品であり、当社(店頭窓口およびインターネットバンキング等いずれも)では「申込・売買・現物への転換(交換)」等一切お取扱できません。本商品に係るお取引をご希望の方は、最寄の取扱第一種金融商品取引業者(証券会社)にお申込み下さい。
    なお、貴金属現物への転換(交換)は、小口転換取扱証券会社のみのお取扱となりますのでご注意下さい。
  • ②小口転換取扱証券会社以外の証券会社で本商品を保有されている方で、現物への転換(交換)を希望される方は、小口転換取扱証券会社への口座移管が必要となります。
  • ③貴金属現物から本受益証券への転換(交換)はできません。
  • ④転換(交換)には一定の口数が必要となります。また、銀・パラジウムは大口転換(交換)のみとなります。
  • ⑤転換(交換)には手数料が必要となります。詳しくは、「転換(交換)について」をご参照下さい。

【その他ご留意事項】

  • ●本商品は、預金等や保険契約とは異なり、元本の保証はありません。
  • ●本商品の運用により信託財産に生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。
  • ●本商品は「預金保険制度」の対象ではありません。
  • ●金融商品取引業者以外の金融機関は、投資者保護基金の対象ではありません。
  • ●本商品は、販売会社がお申込みの取扱を行います。
  • ●本商品の売買を行われるに際しては、予め、お取引先の金融商品取引業者等により交付される契約締結前交付書面等を十分にお読み頂き、商品の性質・取引の仕組み、リスクの存在、手数料、信託報酬等の費用等を十分にご理解いただいた上で、ご自身でご判断下さい。
  • ●本商品は書面による契約の解除(クーリング・オフ)の適用はありません。
  • ●本商品は投資信託ではありません。

【手数料およびリスクについて】

  • ●本サイトに掲載の商品毎に所定の手数料・信託報酬等の費用をご負担いただきます。
  • ●本商品は値動きのある地金等を信託財産としているので、一口あたりの純資産額(取引所開示)は変動します。したがって、投資家の皆様の投資元金が保証されているものではなく、一口あたりの純資産額(取引所開示)下落により損失を被り、投資元金を割り込む事があります。
  • 手数料およびリスクの詳細につきましては必ず目論見書・有価証券届出書(純金上場信託/純プラチナ上場信託/純銀上場信託/純パラジウム上場信託)をご覧下さい。

商号等 : 三菱UFJ信託銀行株式会社 登録金融機関 関東財務局長(登金)第33号
加入している協会の名称 : 日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会


JDR(日本型預託証券)
金ETFの魅力を語る。「金の果実」を保有するメリットは?