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豊島逸夫による金市場の解説

2015年06月11日
第5回「パラジウムの相場動向 過去・現在そして未来」

「パラジウムの相場動向 過去・現在そして未来」

前回まではパラジウムの基礎知識としてその歴史と特性、そして需給を解説してきました。

今回でパラジウムの解説は最後です。

今回はパラジウム相場の歴史的な価格動向と現在の相場について解説します。

少し専門的になるかもしれませんが、今は難しいと感じても、実際に相場を意識してみるようになるときっと腑に落ちるときがくると思います。

 

「パラジウムの相場の歴史」

 

(ドル建てパラジウム動向 1993-現在)

2015060801.jpg 

 

まず過去25年間のチャートです。

パラジウム相場は1996年ごろまでほとんど動かないマーケットでした

このチャートにはありませんが、1991-1993年にかけては100ドルを割り込み70ドル近くまで下げていました。

しかしそれ以降は100ドルを越えて1994-1996年はじわじわと150ドルへ向かってゆっくりと上昇するマーケットでした。

異変が起きたのは1997年からです。

19928月に当時の東京工業品取引所(現東京商品取引所:Tocom)にパラジウムが上場されたのですが、1997年突如としてその出来高が前年の434千枚(1500g)なので217トンから3818千枚(1909トン)と9倍近くに膨らみ、そしてこのTocomでの取引がその後2001年の史上最高値1140ドルへと続く相場の原動力となったのです。

 

Tocom パラジウム危機」

 

過去の相場の流れをここでどうしても「パラジウム危機」の話をする必要があります。

1997年から2001年に至るパラジウムの150ドルから1140ドルへの急騰の原因は、この期間のTocomの取引にあると言っても過言ではありません。

この期間のTocomの出来高は下記のグラフでわかるように急激に増加して急激に減少しています。

まさに上記の価格チャートと同じ形をしています。

 

201506083.png

 

 (円建てパラジウム価格動向 1993年から現在)

2015060804.jpg

 

最初に書いたとおり、長い間パラジウムは安値安定のメタルであり、150ドルは天井との見方が定着していました。

ところが1997年あたりからじわじわと上昇を始めたのです。

しかしこれまで安値に慣れていたTocomの個人投資家は逆に値ごろ感からショート(新規売り)を建てました。

しかしパラジウムは上昇を続けました。

個人投資家はナンピンの売りでショートを膨らませていきます。

個人投資家の売りにより、Tocomパラジウムは海外(Loco Zurich)マーケットよりも割安になり、裁定取引をしている商社はTocom買い、Loco Zurich売りという裁定取引を続けます。

個人の売りは止むことを知らず、それに対して商社が活発なアービトラージをおこない、Tocom パラジウムは取組・取引高ともに急増していきました。

この状況に目をつけたのが、某大手米系証券会社、有名マクロファンド(ファンダメンタル=需給を徹底的に研究して投資するファンド)、そして米国の大手自動車会社でした。

特に米手自動車会社は、おそらくはロシアからの長期契約でパラジウムを調達していましたが、Tocomでは巨大な量のパラジウムが取引されており、もしTocomを買い建てて現物を引けば、長期契約よりもはるかにリーゾナブルな価格で大量にパラジウムを調達できることになります。

彼らは日本の商社や外資系トレーダーを通じて、Tocomのパラジウムを大量に買いに入りました。

彼ら、特に自動車会社は先物市場ではなく、現物の調達先とみていたので、当然価格が上がって利益が出たからと言って売り戻すつもりは毛頭ありません。

彼らの欲しいのは取引差益ではなく「パラジウム」現物だったのです。

そして彼らに対して売っていたのは日本の個人投資家です。

その結果がどうなったか、火を見るより明らかです。

買い手は売り戻すつもりがないので、売り手は買い戻せません。

そして売り手、日本の個人投資家がパラジウムをデリバリーできるわけがありません。

パラジウムなんて見たことも無かった人がほとんどでしょう。

マーケットに売りが無く現物も渡せないということになると、最終的にTocomは売り手の買い戻しの買い気配のままで価格だけが上がり続けることになりましす。

それが上のチャートの急騰している部分です。

ドル建てで150ドルから1000ドルを越えるまで上昇したパラジウムに、Tocomは「強制溶け合い」という最終手段に出て、強制的に売り買いを成立させて建て玉を手仕舞いさせました。

そして相場は200ドルまで急落することになったのです。

この強制溶け合いは売り手はもちろん、買い手にも多大な損害を与えました。

おそらくTocomでパラジウムのポジションを持っていたすべての人が損をしたと思われます。

最終的な手段を取るのは取引所の権限ですが、ルールに則って取引をしていた外資系のロング筋にとってはとんでも無い話で、この事件により、それから数年間Tocomでは一切取引をしなかった会社もあります。

少なからず裁判も起こされました。

ですからこの「パラジウム危機」に関してはあまり語る人がいません。

まあ当時を知ってる人が現実的に少なくなったということもあります。

僕は直接その渦中にいたので、いまだにこれを語れるおそらく数人のうちの一人です。

Tocomのパラジウムの出来高はそれ以来激減、今に至っています。

 

ということで、パラジウムの歴史的高値1140ドルはこういう事件によって達成された価格だったのです。

その後パラジウム価格は長い間低迷期に入りましたが、2008年に一度600ドル近くまで上昇してから200ドルへ反落、そしてその後、長い上昇基調となり20149月には900ドルタッチの場面もありました。

ゴールドが20119月に1900ドルという歴史的高値をつけてから反落、シルバープラチナもゴールドに従属した動きとなっているのですが、パラジウムだけは他のメタルと乖離したしっかりとした動きになっています。(下記チャート)

 

(貴金属3メタル過去5年の動き)

ゴールド(黄色)、プラチナ(ピンク)、パラジウム(白)

 2015060805.png

 

このチャートが示すとおり、昨今、貴金属の中ではパラジウムがもっとも堅調です。

それは、パラジウムの需給環境が他の貴金属に較べてもっとも引き締まっている、つまり供給がタイトで需要が強いというファンダメンタルにあります。

同じPGM(白金族)であるプラチナとの違いがそこにあります。

プラチナに関する詳しい話はまた、この次にする予定ですが、パラジウムの相場を考える上でもプラチナとの比較はとても有効です。

個人的にはパラジウムの価格はプラチナに近くなっていくものと考えています。

 

 

「パラジウムの背景にある自動車触媒需要 - プラチナ・パラジウム比価」

 

 2015060806.png

そこでプラチナとパラジウムの比較です。

下のチャートは、プラチナとパラジウムの価格チャート(上)とプラチナとパラジウムの比価(プラチナの価格をパラジウムの価格で割ったもの)(下)の推移です。

2009227日にはパラジウムはプラチナに対して1:5.485分の1以下の価格でしたが、今年313日には1:1.41までその差は縮小、現在は1:1.42と最大の5倍あったプラチナとの値差がもはや2倍を大きく下回るところまで下がってきました。

 

(ドル建てプラチナとパラジウム)

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(プラチナ / パラジウム比価)

2015060808.png 

 現在パラジウムの需要の7割を占めるのは自動車触媒であり、それがこのプラチナとの関係の変化の背景にあります。

リサーチ会社のMetals Focusは、自動車の主要な市場の経済危機からの経済回復の度合いが、マーケットによって違うことが結果的に影響したと言っています。

また、プラチナにおいては自動車触媒需要は全需要の40%に過ぎないという需要構造の違いもその一因となりました。

 

おそらく皆さんももうご存知の通り、ガソリン車が圧倒的多数を占める北米と中国はパラジウムにとってはもっとも重要なマーケットです。

北米の自動車売上高は200911月には1100万台という底をつけた後、FRBの金融緩和政策とゆるやかな景気回復によって、過去5年半、年率にして平均8.9%で自動車販売は増加し、今年3月には1780万台と20065月以来最高のレベルにまで上昇しています。

 

(米国自動車売上台数とパラジウム価格)

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もう一つの重要なマーケットである中国の2009年から2012年の間の大きな増加は、他のマーケットの弱地合いをカバーしてあまりあるものでした。

その自動車売上は記録を塗り替え続け、2009年は125トンであったパラジウム自動車触媒需要を、2014年には230トンまで引き上げました。

2009年はJMの数字、2014年はMetals Focusの数字です。ちなみにGFMS Survey2014年の需要は205トンとしています。)

 

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欧州は自動車の売上の55%がディーゼル車であるのですが、景気回復は北米に較べても非常に弱く、経済危機以前は1400万台を越えていましたが、2009年のリカバリーは一時的なものであって、欧州の多くの地域では景気後退の第二波に巻き込まれました。

そして史上最小の売上となったのは、20136 月に1130万台を記録、米国の景気の底からほぼ3年半が立ってからの最低記録更新となりました。

そして20153月には1240万台回復し、年率にして4.8%の伸びになっています。

国別では大変まだら模様であり、もっとも好調だったのは英国で20103月から24%の伸びを記録。二位はドイツで10%の伸びでした。

逆にイタリアは38%の下落、フランスが19%、スペインが10%と大きく自動車売上が減少しています。

 

(欧州の自動車登録数とプラチナ価格)

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欧州全体としての経済回復が非常に鈍かったため、プラチナの自動車触媒需要も回復がゆるやかとなりました。

2014年は93トンと2009年の68トンというどん底からは改善しているものの、2008年の137 トンにははるか及ばないレベルです。

2014年、パラジウムがプラチナに較べて大きく伸びた背景にはもう一つ南アでのパラジウムETFの上場により、37トンの新たな需要ができたことも特筆しておくべき事項です。

 

今後もパラジウムはプラチナと比較してよりタイトな需給は続きそうです。

パラジウムの自動車触媒需要は今後も順調に増加していくことが予想され、供給不足がこの先何年も続くことが予想されます。

一方、欧州の景気回復は、ギリシャの負債の問題もあり、南欧州の経済不調が足を引っ張り、今後も厳しい状況が続きそうです。

2014年のプラチナ・パラジウム比価の平均が1:1.7でしたが、今年もプラチナが苦しい状況が続いていることを考えると平均でも1:1.5くらいまでは下落しそうです。

長期的にもパラジウムの価格は限りなくプラチナに近づいていくと思われます。

 

以上

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